第47回 全国建築板金競技大会
3月1日、2日にかけて富士教育訓練センターにて全国建築板金競技大会が開催されました。
東京からは ZIC 森谷選手、NYAC 青木選手 小野原選手 新井選手の4名が参加し、小野原選手は8位入賞となりました。



以下、4選手から代表いたしまして森谷選手の奮闘の様子と本人執筆による大会の模様です。
第47回全国板金技能競技大会。ZIC(技能競技)出場の森谷(新宿中野杉並支部)です。2023年に1級技能士を取得した記念に参加させていただきました。
4月1日に発表されて課題を見るも、展開図をどのように作成すればよいか全然理解できず、関東の講習会まで温存していました。初めて向き合ったのが11月23.24の講習会。他の参加者は銅板を加工し始めているものの、私は一人展開図をゼロから始める始末。
二日目に何とか板取まで進みます。自宅に帰って、展開図(A2ケント紙を2枚)の配分と手順をちょっと復習。銅板に触れぬまま、年明け2回目の講習会。実践形式といことで展開図から始めるかと思いきや、参加者は板取をすでに用意して臨んでいるなか、私は結局最後の講習会も板取で終了。2回ともたっぷりの道具を抱えて臨むも、展開図と板取で終わってしまい、肝心の加工に関する経験を積めませんでした。
とにかく始めなきゃと本格的に始動したのが世間が豆まきで盛り上がり始める賀詞交歓会のころ。そして現場は社員に委ね、展開図の時間短縮を図るため動画撮影と倍速再生を繰り返して45分くらいが限界。気づいたらあと2週間。銅板にそろそろ触らなければと思い、板取の研究、そして大事なことがカンテキでハンダこてを熱して使用することを思い出す。
ただ焦るのみ。
先ずは作ってみるものの、競技時間4時間以内(延長無しで超過は失格)なのに休憩挟んで10時間超えでも未完成。それでも前向きに進む。
ラスト1週間でAmazonと島忠に毎日お世話になりながら、最後に前日にこっそり道具箱の下に垂木で下駄をはかせて治具を作成。
そしてやってきた当日、一人会場手前の温泉センターで富士の名水炭酸泉と高濃度塩風呂で整いながら会場入り。道具チェックで5つ道具をはじかれたものの想定内と言い聞かせる。
決戦の日
10秒前から小刻みに手が震えてくる。
競技はじめの合図。
しかし展開図からなので静かな戦い。寸法は覚えているのに、どことどこの線を結べばよいのか焦点が合わないものの、深呼吸をしながら進めていく。
展開図最大のピンチは屋根の展開が起点を8mm間違えどう見ても失格レベルになってしまい、15分のロス。それでも2枚書き上げれば、まだ1時間以内。しかも他の選手たちはまだ展開図を書いている。慌てず且つ、胸を張って欄外の銅板を作業範囲内に搬入、ちょっと大げさにポンチを打とうかと思ったが、そんなことより無駄のない動きで打刻を走らせる。
視線を感じる。
また大げさにケガキを確認。点と点を結ぶ。
指差し確認 ヨシ!
わざとらしく直刃を立ててから銅板を切り始める。まだ展開図を書いている選手がいる。これはいけるかもしれない。冷静にならずにはいられない。
ある程度板取を終える。膝が痛い。細かいコンパス、切断、穴あけ。だんだんと手順がわからなくなりつつも、とにかく手を休めてはいけないと心掛ける。気づいたら手袋が破けているので初めての手袋交換。
ところがびっちゃびちゃで、新しい手袋が入らない。咄嗟に襟巻を外し、不要と思った汗拭きタオルを取り出し額の汗を拭う。
水分補給。2時間くらい経ったころに館内放送、
『只今から施設関係者による会場内見学を実施、巡回をしますので選手の皆様ご了承願います』
いや止めて。
また汗出てくるでしょ。
いつも以上に手袋の破れが生じる。しかし自主練では無かった手の汗によりエンジニアゴム袋がハマらない。素手で行こうか迷うが心を落ち着かせるチャンスと言い聞かせて、あえて少しゆっくりと手袋をセットする。
観戦していた中込青年部長からその後無駄な時間だったと指摘を受ける。10分は脱ぎ履きしていたかもしれない。何から組み立てようか、炭をどのタイミングで要求しようか。
残り時間1時間10分。ハンダを始めないと間に合わないので、とにかく炭を要求します。8つのパーツのうち、7つがハンダ対象である。
丸頭突きつけ、部材結合ライン、文字盤円形時刻鋲、こちらも戦略が必要。
前週に石井先輩から極意を伝授していただいたので自信はある。手を挙げ、ウエスを濡らしに水場へ歩み寄ると、善部町の村田氏(茨城県板)と目があったのでウィンク。
そこから先はもう記憶がないくらい時間に追われながらの進行だったが、『10分前!』のコールの次が『1分前!』に愕然!!未完成を悟り、せめて5m離れたところからは気づかれない程度の渾身の積み木。
『終了』のコール
不思議と涙は出なかった。
練習不足とわかっていながら、とても悔しかった。しかし手応えは感じた。ただし、個人で臨むには上位(優勝)は困難と感じた。むしろ組合の力を結集して臨むことが楽しそうに思えました。
とにかく、「楽しかった」の一言です。
この思いは是非仲間達にも経験していただきたいと思います。
本当にありがとうございました。
森谷 尚次